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その10:春キノコブラック

≪注意≫
 本ブログはキノコ屋見習いの観察をざっくりまとめたもので、実際の同定に利用できるものではありません。キノコの正確な判別は経験者でも間違えることもある難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添ってもらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死んだり死ななかったりします。

 なお記事内容に訂正・補足がある場合はコメントなどでご指摘いただきたく存じます。
 3/24(日)。私は春風に背を押されるように自転車で山道を走っていました。フィールドに出るのはいつ以来のことでしょうか。2/2に出たのが最後ですから2か月近く山に言っていないことになります。その間色々と忙しく、とてもキノコを探しに出歩く暇はなかったのですがこの度ようやく落ち着いてきたので気持ちの整理もかねて出かけてみたのでした。

 さてこの頃は早いところでは桜の開花宣言が始まった頃合いです。となると見に行くのは決まっていますね。そう、春キノコです。今まで再三言ってきたことですが春には春のキノコが生えます。そしてこういうキノコの最盛期からずれて生えるキノコは変な連中が多く、この時期を逃すと来年になるまで会えない相手ばかりです。
 今回のメインの狙いは春キノコの代表たるアミガサタケ、そして春に生える虫草のオオセミタケやタンポタケ、ハナヤスリタケなどです。ここにあげた相手は一応見ることはできていますが、どれも他県で案内されてみたものばかり。地元の自分のフィールドではまだ見つけたことがありません。そんなわけで今年こそは発生地を見つけてやると意気込んでいました。

 まずやってきたのは自転車で30分ほどの神社の境内。普段無人の神社ですが地元の方が手入れをしているので割とこぎれいな環境です。こういう人の手が入った古い境内なんかが実は狙い目だったりします。とりあえず1~2時間はここを集中的に探すか、と荷物を下ろして装備を整えました。そしてもう一度リュックを背負おうとしたところ、

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 いるじゃねーか!!

 素で声を上げてしまいました。本当に荷物を下ろしたすぐわきに生えているんですもの。むしろなんで最初に気付かなかったんだ。

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 周りを探せば出るわ出るわ。半駅10mほどの範囲に20本近く生えていました。これぞ念願のブラックモレルです。何のことかというとアミガサタケの仲間は大きく二つのグループに分けられています。

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●トガリアミガサタケを代表とする頭部の黒っぽいブラックモレル
IMG_7702.jpg
●アミガサタケを代表とする頭部の黄色っぽいイエローモレル

 この2つです。両者の違いは色合いだけではなくて発生時期も微妙に違います。出るのはどちらも春なのですがブラックの方は3月ごろで、イエローは4月に入ってから出てきます。(地域によって多少のズレはあります)今回ブラックがちょうど生え始めていたということはまだまだイエローには早い時期ということでもあるわけです。

 ただこのブラックとイエロー、先述の通り複数の種を含んだ大きなくくりですが、もっと言うとアミガサタケとかトガリアミガサタケというのもおそらく複数の種をまとめたものだろうと言われています。今回見つけたものもおそらくはトガリアミガサタケそのものではなさそうです。形態的に見ればアシボソアミガサタケあたりが近いでしょうか。

 もっともここで見つけた個体は記念すべき第一発生地でもあり、今後よりたくさんの個体を出してくることを願って採取しませんでした。なので細かい検鏡などは行えず、正確な判別はできていません。トガリアミガサタケ(広義)とか、もういっそブラックモレル呼びで済ませておきましょう。間違ったことは言ってないはずです。


 さあ開始早々念願の相手を見つけられて気分は上々意気揚々です。せっかくなので動画とか撮っちゃうぞ! 何を隠そう先日、動画撮影用にビデオカメラを購入していたのです。今まではデジカメのムービー機能で撮影していましたが、SDカードが安物のせいか、読み込みが追い付かずちょくちょく録画が止まってしまうことがあったのです。しかしそんな悩みもこの新兵器でさよならだ! 思う存分動画を撮るぞ!

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 家に忘れてきてました。
 仕方ないので動画は今まで通りデジカメで撮りました。しょっちゅう止まるので余計な時間ばかり食う。

 しょうもない失敗でちょっと盛り下げられてしまいましたがそれでもブラックモレルによる昂揚感はまだ残っています。この調子で春生の虫草なんか見つけちゃったりして! なんて浮かれ気分で次のポイントへ向かいます。途中、昨年から観察を続けているガヤドリさんにも挨拶をしましたが、見るからにボロボロになってました。

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 これ本当にこっから成熟するんだろうか? このまま朽ちちゃうんじゃないの?

 急な山道を自転車を押しながらえっちらおっちら登っているとヤシャブシの木が見えました。木というか落ちている花ですぐわかります。こういうヤシャブシの樹下にはとあるチャワンタケの仲間が生えるのというのを聞いていました。さっそく探してみようと這いつくばってうろつきます。

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 ところが見つかったのは思わぬ相手、オイラセクチキムシタケでした。最初に宿主のキマワリ幼虫のオレンジ色が目につき、もしやと思ってよくよく見ると子実体を伸ばしている! というかしっかり結実している!

 オイラセクチキムシタケはマツ材などに生える虫草でキマワリの幼虫を宿主にしています。本来なら朽木から出ているのを探す相手なのですが、ここは地面の上。上の方にあった朽木が崩れたか、埋木でもあったのでしょう。狙っていなかっただけにちょっと嬉しい出会いです。

 ちなみにこのオイラセクチキムシタケは冬場に生えて春先に成熟するという変な虫草です。本来なら梅雨から夏にかけてが最盛期の虫草の中で真逆の季節に生えてきます。虫草屋はあまり冬場に活動しないためあまり見つかっていないようですが、おそらく日本各地にかなり普通に発生しているようです。ただ不稔個体という子嚢殻(胞子を作る器官、上の写真中央ののツブツブしたところ)を作らないまま終わることも多いというよくわからないやつです。実はこの画像のように成熟しているのはちょっと珍しかったりします。

0324 (8)  さて偶然オイラセクチキムシタケを見つけたことで一つ思いついたことがありました。それがこちら。これもオイラセクチキムシタケなのですが、先ほどの個体とはちょっと違います。実はこれ、別の山で見つけた個体を私が広って持ってきたものなのです。

 この個体を見つけたのは昨年の11月に行ったとある観察会。この時はまだ成熟もしておらずひょろりと子実体が伸びているだけでした。一応発見した個体をリストアップし参加者に説明するために採取はしたものの、まだまだ未成熟だしこのまま捨てるのは忍びない。かといって自宅で追培養して上手くいくとは思えない。そこで一計を案じた私は「虫草の生える環境に放置したらうまく適応して成熟していくんじゃないか?」と考えました。これぞ天然追培養。家からアクセスのいい虫草のフィールドに置くことで自然下の刺激を与えつつ定点観察も行えるという画期的な手法です。特許採れるんじゃないかな。

 実際のところやっているのは山に放置してるだけなんですがとりあえずオイラセクチキムシタケに関しては成功したようです。埋め込んだ朽木をイノシシに砕かれた時はどうなるかと思いましたが。今後も追培養するときは同様の手法を試してみることにします。

 その後オイラセクチキムシタケを移植した虫草の発生地にて春生虫草を探しましたがこっちは完全に空振りでした。お!っと思ったらミヤマタンポタケの残骸だったり、テングノメシガイだったり、クシラリア・リクイダンバルだったり。腹が立ったのでこいつらの写真は撮りませんでした。

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 タマキクラゲ。小枝から生えるヒメキクラゲ属のキノコ。なんだかんだで春先に見ることが多いので個人的には春キノコとしてカウントしてます。春以外でも見るっちゃ見るんですけどね。

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 ハマシメジだったかクマシメジだったか。もともと別種に分けられていた二種ですが結局同じ種だということで統合されたと聞きました。ただ肝心のどっちにまとめられたのかを忘れてしまって……。どっちでしたっけ?

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 ホシミノタマタケ属。図鑑的にはオクタヴィアニア・ノナエとかそこら辺なのですが、こいつら図鑑に載ってない近縁種が多いのだそうです。特にノナエの類似種はもうDNA鑑定しないと判別つかないレベルのもいるのだそうでちょっとお手上げですね。属で落として終わりましょう。

0324 (14)  そして最後にツバキキンカクチャワンタケ。こいつを見ないと春という感じがしませんね。慣れるとすぐ見つかるし安定して生えてくれるのでありがたい相手です。実家の庭のツバキにつけようと数個拾って帰りました。


 ツバキンを拾ったあたりで時間は午後4時を回ったところでした。もう少し粘ろうと思えば粘れますが、少し肌寒くなってきたのでここいらで引き上げることにしました。春生の虫草こそ見つかりませんでしたが前々から探していたブラックモレルも見つかっただけでも十分な成果でした。帰ったらツイッターに画像あげてー、仲間に報告してー。心地よい余韻に浸りながら帰路につきました。実に清々しい気分です。身も心も軽くなるとはまさにこのこと。それまで抱えていたもやもやもリフレッシュして、肩の荷を下ろしたような心持でした。

 っていうかリュックサックを背負っていませんでした。
 最後にに回ったフィールドに忘れてきていたようです。そりゃ軽いだろうよ。自転車の向きを変え、再び上り坂に向かうと途端に疲労感が湧いてくるようでした。


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