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その3:秋キノコメモリー

≪注意≫
 本ブログはキノコ屋見習いの観察をざっくりまとめたもので、実際の同定に利用できるものではありません。キノコの正確な判別は経験者でも間違えることもある難しいものです。慣れない内はベテランの方に付き添ってもらうなどして、素人判断での採取・喫食は行わないでください。死んだり死ななかったりします。

 なお記事内容に訂正・補足がある場合はコメントなどでご指摘いただきたく存じます。


 10月の話です。

 この日、私は県北にあるフィールドに出向いていました。メインの目的は一年前にここで見つけたとあるキノコの観察です。一度見たキノコでも毎年出ているのか、その年の気候によって出かたに変化はあるのか、などなど確認しておくことはたくさんあります。中には一度見たっきりで翌年以降にはさっぱり出なくなってしまうこともありますのでいい場所を見つけたら定期的に訪れるのがいいですね。
 それ以外にも夏から秋に移って様変わりしたキノコに挨拶をしておきたいところです。ここは以前描いた記事で虫草を探しまくったポイントでもあるのですが、これくらいの時期になると虫草探しはお休みです。出ないことはないもののどうしても数は少なくなるので今回はキノコメインで探していきましょう。


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 といいつつ見つけちゃうのが私なんですよねぇ。いやー、この数年ですっかり虫草眼が養われてしまって。などと大層なことをいうほどのものでもありません。ハナサナギタケは虫草の中でも特に見つけやすい相手です。思い返せば初めて意識して虫草を探しに行ったとき、最初に見つけたのはハナサナギでした。……あれ? コナサナギだったっけ? まあどっちでもいいか。
 ハナサナギタケは名前の通りガの蛹から生える虫草で先端が花のように開くのが特徴。淡く黄色味を帯びた白色は暗い林床でよく目立つのでキノコを探している最中でも簡単に見つかります。白は有情。この手の虫草はアナモルフ(無性世代・不完全世代)と呼ばれるもので、テレオモルフ(有性世代・不完全世代)と違って割と年中出ているみたいです。今年の1月に地下生菌を探しているときもコナサナギタケを見つけたりしました。おそらくテレオモルフよりも発生条件が緩いのでしょう。


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 次に見つけたのはツチナメコというキノコ。正確には後ろに(広義)と付くところでしょうか。名前は地面から生えるナメコといった意味でしょうが、モエギタケ科フミヅキタケ属のキノコでナメコとは別属。(ナメコはモエギタケ科スギタケ属)
 湿っているときは傘表面にやや粘性があり、柄についたしっかりしたツバが特徴です。こういう感じのツバはいかにもフミヅキタケの仲間って感じがしていいですね。一応食用ですけど、土臭いのだとか。


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 ドングリから生えるドングリキンカクキン。これはミズナラでいいのかな。キノコ仲間のosoさんが前々から見たがっていたキノコで、このポイントでは見飽きるほどに群生するので結構ドヤってました。でも昨年になってとうとうosoさんも見ることができたのでもうあんまりドヤれない。悲しい。


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 ヌメリササタケ。フウセンタケ科のキノコで傘表面の粘液が特徴。わずかに帯びた青紫色がきれいですね。こいつもいくつか系統があってまた分かれるかもという話を聞いたことがあります。はて、こいつは典型的なほうだったかな? 忘れた。


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 ニセチャワンタケ……でいいのかな。形が整ってなくて一部が裂けてるって特徴はあってる。でも図鑑では「一部が底まで裂けて」とあるな。そこまでは深くないようだし、また別の奴か? もっとよく見ておけばよかった。どうにも「盤菌(チャワンタケの仲間)はよくわかんね」という気持ちがあるからなぁ。いかんいかん。しっかり勉強しなければ。


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 オレンジ鮮やかなとんがりキノコ。アカヤマタケか? と触ってみも黒く変色しません。となるとトガリツキミタケの方か。図鑑ではもっと黄色い写真で載ってますがまあここら辺は個体差のうちでしょう。


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 おお? なんともキノコらしいキノコが出たな。こういう奴の方がかえって調べにくいもんです。それでもこいつはカキシメジでいいかな。若いうちは傘の縁が内側に巻いて、ヒダに褐色のシミもあって湾生……湾生かこれ? んー、なんか微妙。割って断面図も撮っておけばよかったな。ヒダのしわくちゃ具合から見るにちょっと生育不良か奇形入ってるかも。
 さてカキシメジと言えば皆さんご存知、誤食キノコ御三家の一つ。いかにも食えそうな見た目してますが毒キノコです。松林に生えるものは食べられる、という話もありますが手は出さないほうがいいでしょう。そもそもそれ別種なんじゃ? って話。


 とまあこんな具合にそこそこキノコには出会えているのですが肝心のあいつが出ていません。というかキノコの出に関してもそんなによくはない感じ。例年なら(まだ数年しか通ってませんけど)この時期はもっと大量のキノコが出て撮影が追い付かないくらいなのです。おそらくこれは2017年の気候のせいでしょう。
 2017年の10月と言えば台風もありやたらと雨の日が多くありました。確か秋に参加した同人イベントはどっちも大雨じゃなかったかな。こう聞くと「雨が多かったのでキノコにはいいのでは?」と思われるかもしれませんがそうでもありません。理想としては盛夏を抜けて9月に入ってから雨が増え、気温が段々と下がっていくのがベストです。それが2017年だと私の地元では8月を過ぎても雨がほとんど降らず、気温も急に涼しくなったりまた暑くなったり。こういう天気だと秋に生えるキノコは不作になることが多いのです。言ってしまえば2017年はキノコの外れ年でした。

 全体的なキノコの不作。それは頭で理解していますが、それとは別に一抹の不安が心に浮かびます。

(もしかして発生地が潰れちゃったんじゃなかろうか……?)

 これが案外考え過ぎというわけでもないのです。キノコの中にはちょっとした環境の変化でぱったりと出なくなってしまうものや、一つのところには居つかずあちこち転々と発生するようなやつもいます。木材を分解するような腐生菌はその材の栄養が尽きたり、材そのものがなくなってしまえばそれまでですし、生きた木と共生する菌根菌も樹木の生長によって種類が変遷していくことがわかっています。今年出たキノコが100%必ず来年も出るとは限らないのです。
 さらに言えば、私自身もしかしてという心当たりがあったんですよね。実はこのポイントには春や夏にも訪れていて、目的のキノコの幼菌はないかと探し回っていました。その際、落ち葉をひっくり返してまわったのでひょっとしたらあれが良くなかったのでは? いやいや、ちゃんと探した後は元に戻しておいたから大丈夫なはず。いやしかし万が一ということも……。

 こうなったら是が非でも発生を確認しないとゆっくり安眠もできません。もう途中から出てこいやこら! という恫喝まがいの言葉をつぶやきながら地面を這いずる男の姿がそこにありました。何かに全力で取り組む姿って美しいですよね。
 そしていよいよこれはダメなのかと諦めかけたその時、ふと見上げた先に念願の姿を見ることができました。


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 いたー! こいつこそが今回のメインターゲットのコウボウフデです! 
 2016年にこの場所で見つけたときは小躍りしたレアキノコです。


※初発見時、いい年してはしゃいでた動画はこちら。

 キノコの仲間は大きく二つに分けると担子菌類と子嚢菌類に分かれます。コウボウフデは子嚢菌類というグループに入るのですが、長いこと担子菌類と思われていた過去があります。その理由は子嚢菌類に特徴的な子嚢(胞子を包む袋状の組織)が生長するうちに消えて見えなくなってしまうからです。私がこいつの幼菌を探し回っていたのは消失前の子嚢を観察したかったからです。まあ結局見つからなかったんですけどね。幼菌の段階だとほんとに目立たないんですよこいつ。


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 ちなみにコウボウフデは地下生菌のツチダンゴに近い仲間です。上の二枚がツチダンゴ属の一種の写真。見比べてみると内部にある青灰色をした胞子の色は同じですね。このツチダンゴをそのまま大きくしたらちょうどコウボウフデの幼菌みたいになります。

 いやー、発生を確認できてよかったよかった。これで一つ肩の荷が下りました。こういうのは不思議なもので一つ見つけると別の個体も途端に目に入ってくるようになります。それでも結局この日見つかったのは3個体だけ。一年前に比べるとかなり数が少ないですね。やはりこれはこの年の気候のせいでしょう。
 またこれらを見つけてから気付いたこととして、どれも前回見つけたのとは違う場所に生えていました。帰ってosoさんに話を聞いてみたところ、どうやらコウボウフデは毎年違う場所から出る性質があるようです。発生するのは毎度同じ一帯なのですが、50mほどの範囲の中で生える場所を変えるようです。どうりで前見た場所をいくら探しても幼菌が見つからないわけだ。今年はもう少し広い範囲で探すことにしましょう。

  何はともあれこの日の目的を達成したのであとはフリーの観察タイムです。いや目的自体私が勝手に設定したものなので最初からフリーっちゃフリーなんですけどね。気楽な気持ちでのんびり探して歩きます。


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 虫草のカメムシタケ。このポイントではけっこう数が出る相手です。ただやはり10月ともなると数が減りますね。夏場に来ればいくらでも生えてるんですけど。
 
 
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 猛毒キノコのタマゴタケモドキ。こいつの白色変種がアケボノドクツルタケと呼ばれています。図鑑などには綺麗な黄色の個体が載っていますがこういう黄土色な奴もいます。いい具合に成長していてかっこいい。ただ惜しむらくはツバがちぎれちゃってるところですね。タマゴタケモドキは何度か見つけていますがなかなか綺麗な写真が撮れていません。

 
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 ウスミベニサラタケオオゴムタケのツーショット。なかなか面白い組み合わせです。図鑑によるとこの二種はよく一緒になって生えていることがあるのだとか。発生環境が似ているのでしょうか。
 

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 オオゴムタケは前に軽く紹介したので省いちゃってウスミベニサラタケを見ていきましょう。キノコ屋の間ではサラミと呼ばれています。由来は見たまんまです。白と紅のまだら模様が何とも美味しそうですが食べられないそうです。個人的には沢沿いなど水辺近くの倒木から出ているのをよく目にしますね。


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 アカツムタケ。前の富士山の記事で紹介したばっかりですけど可愛いのが撮れたので載せときます。材はスギかな。針葉樹の倒木から生えるキノコです。


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 最後に見つけたのはミヤマシメジというキノコ。シメジと名前にありますがホウライタケ科ニセアシナガタケ属のキノコです。何でも発見当初はキシメジ属だかの一種だと思われていたそうで、それで名前にシメジとついたのだとか。画像の通り強い黒変性が本種の特徴。どこを触っても黒くなっていきます。

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 傘裏。そしてもう一つの特徴がこの汁気。キノコの表面に汁管菌糸が密に伸びているので傷つけると薄黄色の汁を出します。このミヤマシメジはちょうどこの年の7月に参加した観察会で教えてもらっていたのでその場で判別することができました。こういう学んだ知識を実践で活かせるといかにも身に着けた! って感じがしていいですね。

 まあ実際のとこ特徴こそ覚えていたものの肝心の名前が出てこず、帰ってから調べ直したんですけどね。

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