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その6:子猫拾ってました。

 それは去る3月、まだ私が同人誌の原稿作業をしながら(順調順調、この調子なら早割入稿狙えるな)とかのんきに思っていた頃のことです。これでも一応社会人である私は昼のうちは職場で仕事に励んで……まあほどほどに頑張っています。時刻は4時ごろ、そろそろ定時だなぁと同僚の運転する社用車の助手席で揺られていると何やら上司が道端に立っていました。その足元には段ボールとその中からのぞくタオル生地。ああ、とこの時点で大体理解しました。
 捨て猫でした。もう目は空いていますがまだ小さい子猫が5匹。実はうちの職場は周りに野良猫が多く、また近くの公園で餌をやる人がいるため、時折こうして捨て猫が持ち込まれることがあるのだそうです。

私「その子らどうするんですか?」
上司「警察に引き渡すよ」

 なのでこうした対処も慣れたものなのでしょう。上司はさっさと警察に電話をし、私たちはその場を後にしました。警察に保護された後は愛護団体に託され、その後里親を探していくとのこと。見たところ病気らしい病気もなく、歯も生えそろった頃合いのよう。これくらいになるとエサはドライフードでいいしトイレも自分でできるし、何より一番かわいい盛りです。貰い手はすぐに見つかるでしょう。後ろ髪を引かれる思いもありましたが、我が家には既に猫が3匹います。その上に5匹も引き取ることはできないので任せるしかないな、とその場を立ち去りました。


 次の日、出勤すると子猫がいました。何でいるんですかと尋ねると本部の事務所が休みだから今日はこっちで預かるとの返答。いやいや、そうじゃなくて警察は? 愛護団体は?
 どういうわけかと聞いてみると警察に捨て猫と認めてもらえず、引き取ってもらえなかったそうです。どうにも警察が保護するのは「遺棄された動物」と決まっているらしく、今回問題となったのは捨てられていた状況。たとえば箱詰めの状態で放置されていれば明らかに遺棄と見なされるのでしょうが、この5匹はオープンな段ボール箱にタオルを敷き、近くに餌を置いた状態で見つかりました。これだともともとそこにいた猫(先述の通りこの辺りは野良猫が多いのです)に寝床と餌をあげただけじゃないか、と捉えられたのだそうです。こうなると遺棄とは認定されず、警察は保護してくれないのだとか。
 それじゃあ愛護団体の方はどうかというと、こっちはこっちで基本的に警察が保護したペットしか引き取らないのだそうです。保護されたペットだけでも多い昨今、個人個人からも引き受けていたら回らなくなってしまうのでしょう。それは仕方のないこととして、

私「じゃあこいつらどうするんですか?」
上司「どうすっかねー」

 言葉を濁しているものの、そこら辺は大体察しがつきました。というか引き取り手のいない捨て猫の行先なんてのは相場が決まっているものです。

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 ということで引き取ってきました。別に使命感やら動物愛護の精神に燃えていたわけではなくて、久々に子猫の相手したいなぁってのが根本にある、羽毛のように軽い気持ちからとった行動でした。どうにも好きなものに関してはあんまり後先考えて行動しないところがあります。
 引き取った5匹の内訳はこちら。

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 灰色トラ♂。他の子猫が飯食ってる時に一人で遊んでたり、他のが遊んでる時に一人で寝てたりとマイペースな性格。柄もきれいで尻尾も真っ直ぐと長い。里親探しに出したら一番に決まるだろうなと思ってました。

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 キジトラぶち♂①。やんちゃな性格でおもちゃを出せばいの一番に飛びついて独り占めする。そのくせ里親に引き渡す時にキャリーケースで運んだら一番ぴーぴー鳴いてた。逆境には弱いのか。

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 キジトラぶち♂②。こちらも元気な性格だが押しが弱く、①におもちゃを横取りされることも。ただ逆にキャリーケースでの移動中はずっと寝てるほどの豪胆。のんきなだけか。垂れ目。

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 三毛♀。人懐っこく甘えん坊な性格。すぐに人の膝の上に載って喉を鳴らす。昔飼っていた三毛猫もべたべたと甘えてくる奴だった。三毛猫はそういう性格が多いのかもしれない。

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 サビ♀。一番のビビり。最初ケージに入れられていた時は隅っこで縮こまっているせいでよく兄弟の下敷きになっていた。うちに連れ帰ってからもなかなか落ち着かず、段ボールの隅でぷるぷるしていた。柄的にも性格的にも里親見つかりづらいかもとちょっと心配してました。

 とりあえず連れて帰ると決めたその日、帰宅途中の獣医で簡単な健康診断とノミとりをしてもらいました。獣医さんの見立てでは生後1か月半ほど。健康で病気などはないものの耳ダニがついているので点耳薬を出してもらいました。
 家に帰ってからはとりあえず使っていない部屋に放り込み、段ボールで寝床を作成。トイレは余っていたものを引っ張り出して設置しました。この時職場に置いていた時に使っていたトイレ砂を持って帰っていたのでそれを混ぜておきます。その後落ち着くまでしばらく放置して、その間に子猫用のエサを買い出しに行きました。これで当面の世話は問題ないでしょう。

 ただ既に書いたように私の家には既に先住の猫が三匹(16歳♀、5歳♂、3歳♂)います。5匹全員を引き取るのはさすがに無理です。できて1匹、無理して2匹といったところでしょう。なので少なくとも3匹は誰か引き取ってくれる相手を探さなければなりません。今まで子猫を貰ったことはあっても、譲ったことはないので初めての里親探しの始まりです。私はネットで告知すりゃすぐ集まるんじゃねーのー? みたいに軽い気持ちで始めました。

 どんな苦労をしょい込むかも知らずに。

 まず手始めに里親探しの基本として知人のつてを頼りました。以前勤めていて今でも親交のあるバイト先に頼んでみたり、友人に連絡してみたり。しかしこちらはすぐに行き詰ってしまいました。忘れてたんですけど、私って友達少ないんですよね。あれ、心当たりこんだけ? って逆にびっくりしました。
 そこで次に行ったのがネットでの告知です。今年に入ってようやくツイッターを始めた私はさっそく活用してやろうと里親の募集をかけました。するとまあ反応のあることあること。リツイートやいいねの告知が止まりません。普段のキノコでもこんくらい行けばいいのにと思いながら見てました。

 ただそんな中ちょくちょく寄せられたのがネット上での里親探しの危険性を指摘するものでした。これは私も聞き及んでいた、いわゆる『里親詐欺』というもののことです。里親として名乗り出てくる者の中には大事に飼いますと口では言いつつ、動物実験の被検体や三味線の材料などに転売したり、ひどいものだと虐待目的で引き取るものもいるのだそうです。世の中私のような清廉潔白で善性の塊のような人間もいれば、クソのような悪人もいるという残念なお話です。

 なので最近の愛護団体では飼い主にふさわしいかどうかを確認するため
・身分証明書の提示
・誓約書への署名と押印
・飼育環境の確認

 これらの三つは最低限行っているのだそうです。中には引き取った後に定期的に写真を送付したり、ワクチンなどの領収書を見せることを条件とすることもあるのだとか。そこまでやるか? と思うかもしれませんが、近年では里親詐欺の手口も巧妙化しており、家族連れを装って引き取りに来たという話も目にしました。
 実を言うと私自身、ペットの譲渡会でやたらと条件を付けたり里親を査定するようなことに疑問を持っていた一人でした。
 そんなことをして間口を狭めたら貰われる子も貰われなくなるだろうと。
 一匹でも多くの子を新しい飼い主の元へ引き渡すのが目的なのにそれじゃ本末転倒じゃないかと。

 しかし実際に里親探しを始めてみてその考えが覆りました。一時的とはいえ手元においときゃ愛着もわきます。何も知らずにのんきに遊んでいるこいつらがもしも変な相手に渡ったらと思うとそりゃ慎重にもなりますよ。愛護団体の方たちが先のような条件を出しているのもそうした想いから来る苦渋の選択なのでしょう。要するに良からぬ人間がいるのが一番の問題なわけです。

 そしてそんな奴らのせいでツイッター上での里親探しがとにかく大変でした。何せこっちはそういう輩がいると常に頭の片隅にちらついているわけですから、誰も彼もが怪しく思えてくるのです。
 女性のアイコン? 警戒されないように画像を拾ってきたんでは?
 ツイート数が少ないな。もしや里親詐欺用の捨てアカか?
 引き取りは1匹か。里親詐欺では複数欲しがるのが多いと聞くが……怪しまれないように逆をついてきたか?

 もはや疑心暗鬼の塊。人を疑うってストレスたまるんですよね。

 そこで私が無い知恵を絞って立てたのが「後出し条件作戦」でした。これはどういうことかというと、ツイッターの告知上では特に条件はつけず気軽にご応募くださいと書いておきます。しかしいざDMでやり取りをし始めたら先述の三つの条件を突きつけるというものです。
 はたから見てたらクソ面倒臭い相手に思われることでしょう。ですがそう思われるからこそ、良からぬ奴らも敬遠してくれるだろうという目論見です。ただこれは同時に純粋に里親として名乗り出た方を試すようなことでもあるので、その点は申し訳なかったなぁと反省しています。
 あとこれもう一つまずいのが下心出してるみたいに見られてんじゃないかっていう不安がありましたね。里親として名乗り出てくれた方の何人かは若い女性の方だったのですが、そういう方にいい年したおっさんの私が「身分証見せて」とか「住んでるとこ確認させて」とか後から言い出すわけですから。今流行りのセクハラだのme tooだのと言われても不思議じゃありません。そんな流行には乗りたくない。
 だから後出し条件の話をするときは心底気を使いましたね。こっちも身分証は提示しますから、とかかなりへりくだってました。今見返すとそういうところも逆に怪しいな。まあおっさんてのはそれだけで怪しいところがありますから仕方ないっちゃ仕方ないか。

 その他、終わった後になってやっておけばよかった作戦として「金銭の受領」というのがありますね。これは子猫を売りさばくというものではなくて、たとえば引き渡しで移動する際に交通費を出してもらうとか、こっちでワクチンを接種するから後で料金を払ってもらうといったことです。件の里親詐欺も転売目的にせよ虐待目的にせよ、お金を払ってまでやるやつはそう多くはないでしょう。次の機会があるかどうかはわかりませんが、その時はこういうやり方も検討します。

 さてそんな感じであれやこれやと気を揉んで何人かとやり取りを続けて数日が経ちました。日々子猫の世話をしながら耳ダニの経過を見るためにまた獣医に連れて行ったり、県外の里親候補に会うために電車を乗り継いだり。
 金は飛んでいくわ、休日は潰れるわ。原稿作業も滞って徹夜作業が続くわ。人を疑うことが染みついて邪推ばっかするように――、ああ、これは元からだ。ともかく大変な毎日でした。

 しかしそんな甲斐もあってか無事に3匹の里親が決まりました。どなたも先ほどの後出し条件を快く受けてくださり、実際に会って話をしてみても信頼できる方たちでした。
 一方で里親がなかなか決まらなかったのは三毛♀とサビ♀の二匹。サビはともかく三毛は愛想もいいのですぐ決まるかと思ったのですがお呼びがかかりません。これはもうこのまま二匹ともうちの子かな、と思っていたところ、すっかり忘れていた知人から子猫を見たい人がいるという連絡がありました。私はこの時点でネット上での募集を打ち切り、一匹が決まれば残ったほうを、決まらなければ二匹とも自分が引き取ることに決めました。
 日程を調整して段取りを決め、私は2匹の子猫とともにお相手に会いに行きました。やってきたのは子連れの若奥様で、聞けば知人の知人のそのまた知人とのことで、それもう他人じゃねーかと率直に思ったのを覚えています。しかし猫の取り扱いやこちらにしてくる質問などは猫を飼った経験から来る確かなもので、聞けば3匹の猫を飼っていたのだそうです。しかしその内の2匹が老衰で亡くなってしまい、残った若い1匹だけでは寂しいだろうと新しい猫を探していたのだと言っていました。一緒に来ていた知人の知人(私-私の知人-知人の知人-里親候補の人)とも「写真送ってねー」などとやり取りしており、やはりリアルの繋がりって強いなと思いました。子供も大層気に入っているようなので向こうが良しとするならこのままお願いするつもりでいました。
 ところがここで返ってきたのが思わぬ言葉、

「どっちも可愛すぎて選べない……。両方はダメですか?」

 人柄については直接会って話して信が置けると判断しています。
 それならば私の答えは一つしかありませんでした。

私「可愛がってあげてください」

 簡単なあいさつを済ませて私は空のキャリーバックとともに帰路につきました。よい相手が見つかって嬉しくもあり、自分の元には一匹も残らず寂しくもあり。名前を付けずに置いたのは英断だったな、とぼんやり考えていました。
 自宅に帰ってもあれだけうるさかった子猫の走り回る音は聞こえてきません。部屋の片づけもしなければならないし、ツイッターで報告もしておく必要もあるでしょう。とりあえず私は自室のパソコンに向かい、座椅子に腰を下ろしました。
 べしゃりと冷たい感覚。飛び上がり見下ろせば見慣れた水たまり模様。そしてこの臭い。
 おしっこされてました。

 お前ら本当に最高だな。



 そんなわけで子猫の里親探しとその顛末でした。正直里親探すより自分で飼って面倒見た方が楽なんじゃないかと思いました。私の場合はいい人に巡り合えたのがせめてもの救いですね。また子猫だったからすぐに引き取り手が集まったというのもあるでしょう。大人の猫の相手を探したりしてる愛護団体の人たちは本当に大変だろうなと思いました。

 ちなみいるかどうかわからないし、たぶんいないだろうと思っている、むしろいないほうがいいんじゃないかとさえ考えていますが、この記事を参考に里親探しをされる方へ。
 こんなブログ参考にするよりは愛護団体のホームページ見て回ったり、直接問い合わせた方が確実だと思います。記事内に出ていた誓約書などもそういったところからダウンロードすることができますので活用するのがいいでしょう。

 それでも何かしら教訓を伝えるとしたら大事なのは直接会って話すことと、現実で付き合いのある人から探すのが一番ということですね。ネット経由は広く早くつながる反面、どうしても信用面に不安が残ります。情報化社会の今だからこそリアルの繋がりを大事にしましょう。
 あとは疑うのも必要ですけど最終的には信じて託さなきゃいけないってことも実感しましたね。何一つ疑わないのも問題ですけど、疑いすぎて何も信じられなくなったら話が進みませんから。

 色々と大変ではありましたし失うものも多くありました。一方で得たものがあったかというと特にないような気もします。せいぜい自尊心を失わずに済んだってくらいでしょうか。それでもやったことに後悔はないし、次同じ状況になってもやるんだろうなと思います。
 でもやりたいかやりたくないかで言えば絶対にやりたくないので猫捨てんな。


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 最後にご協力いただいた皆様への感謝を。
 そして子猫と里親さんたちに幸せな生活がありますように。

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コメント

よかった

みんな行き先が決まって良かったです。
私も友達の猫の里親探し手伝ったことがあるのですが、大変でした。。。
動画も見ました!みんな可愛い猫ちゃんでしたね。例大祭も頑張ってください!

No title

>>りんご様
ありがとうございます。やはり子猫の可愛さは何物にも代えがたいですね。うちの三匹も昔は……。まあ今は今で可愛いものですけどね。

No title

ひょっとして、ガガンボさんの作品にお燐ちゃんの登場率が比較的高いのは、ネコ好きだからですか?
それとも単に地霊殿ズが好きなのか…
何にせよ、お燐好きとしては嬉しいかぎり。

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