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その7:許可申請のあれやこれ

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 なかなか時間が取れずすっかりご無沙汰になっていたブログも更新です。何も怠けていたわけではなくて、同人イベントでは京都へ行ったり広島へ行ったり、キノコ観察では熊本へ行ったり愛媛に行ったり観察会を主催したりと精力的には動いていました。今回はそんな中で私が主催した観察会の前日譚的なお話です。

 さて今更言うほどのことでもありませんが、私は地元のきのこ研究会に籍を置いています。そんな会の活動として県内各地で観察会の協力をしたり、調査を行ったりしています。ただこれらの調査活動もまだまだ十分とは言えず、今のところ中心的に行われているのは県北の地域ばかりで県南のフィールドはほとんど手付かずという状態です。

 当然これには理由があって、メンバーの棲んでいる場所やコネのある自然公園の兼ね合い、さらにはそういった寒い地方のキノコの方が研究が進んでいるというのもあってのことです。前にどこかで書いたことがあるかもしれませんが、傾向としてキノコは寒い地方の方がメジャーどころやレアものが多くなり、個体も大きくて見栄えのするものが増えていきます。となると調査に行って楽しいのはやはり県北の方となってきますね。

 とはいえ、それではいつまでたっても県南の調査が進まない。何より私の地元は県南も県南、山一つ越えれば瀬戸内海ってな場所にあるのです。うちの周りにだって面白い環境があるんだぞ、と知らしめたい気持ち半分、自分一人では見きれないからちょっと手伝ってよという気持ち半分。いや3:7くらいかな。ともかく県南でのキノコ調査の必要性を感じていたのです。

 それとは別に考えていたのは虫草メインでの観察会です。私は普通のキノコも虫草もどちらにも手を出していますが、実はこういう人ってこの界隈では少数派です。キノコをやる人はキノコだけ、虫草をやる人は虫草だけというのが主流で、ご多分に漏れずうちの会でも虫草ができる人間がほとんどいませんでした。そのせいで観察会で虫草が見つかると全部私が担当することになったり、調査のたびに何か虫草見つけるのがノルマみたいになったりすることもしばしば。私は何かを任されたり責任を負うのが大嫌いな人間なのでこのままではいけない、もっと虫草のわかる人間を会の中で増やさなければという考えに至ったのです。

 そういった経緯でこの6月に私は二つの観察会を開くことにしました。一つは県南の自然公園でキノコの観察会で、もう一つは虫草メインの観察会です。これは主催が私ということもあり、場所の選定から許可申請の手続き、会のメンバーへの情報伝達まで一人で行うことになりました。そしてこれが苦難の日々の始まりとなったのです。


 といっても場所は普段私が歩いているフィールドでいいし、情報を回すのも今やメールを流せば済む時代。唯一にして最大の難関は許可申請の手続きでした。まず私が着手したのは県南観察会のフィールドである地元の自然公園です。ここは私のメインフィールドと言ってもいい場所で、学生時代から何年間も通い続けています。ここならある程度出るポイントもわかっているから案内もしやすいはず。そう深く考えもせず選定し自治体に許可をとることにしました。基本的に自然公園の体をなしている場所は動植物の採取が禁止です。現にこの公園も採取は禁じられており(地元のじいちゃんばあちゃんはワラビ採ってたりしますが……)私も普段は撮影と観察だけにしています。

 しかしながら今回は研究会の観察会という大義名分があります。研究会の活動方針やこれまでの活動実績、今回の調査の意義をメールにしたため、自治体の担当部署に送付しました。その返事は、

『条例で採取が禁止されてるのでダメです』

 いや実際はもっとちゃんとした文章で返ってきたんですけどね。これくらいバッサリとした返事でした。もうちょっとこう、手心というか……。

 このままではてめーこっちは住民税払ってんだぞとアホなクレーマーみたいな思考に陥りそうだったので報告もかねて他のメンバーに相談しました。私の話を聞いて幹事の一人であるKさんは「やっぱりねぇ」と納得の様子。聞けばこのKさん、私が許可申請を上げる数年前に一度許可をとろうとして同様に却下されたことがあるのだというのです。さらに例の採取を禁止している条例がおかしいという話も聞きました。

 通常この手の条例は「みだりに採取してはならない」というような含みを持たせたり、なにがしかの条件を満たせば許可が下りるようにできているのだそうです。そうでなければ今回のような学術的な調査なども行えなくなってしまうからです。しかし私の地元の自治体では「公園内での植物の採取を禁止する」の一文があるだけで全面的に禁止してしまっている。おそらく条例を作るときに詳しい人がいなかったのではないかとさえ言われていました。

 これでは許可を得るのは難しいか、かといって簡単に引き下がりたくもない。何か手があるのではないか。そう考えた私はあることに気付きました。件の条例に書かれているのは植物の採取のみ! そしてキノコ=菌類は植物ではないのです! よっしゃ、法の穴を見つけたぞ! これならどうだ!

『条例の意図からして菌類でもダメです』

 まあそうだよね。自分でやっといてなんですけどそうだろうなぁとは思ってました。だって自然保護目的で作られた条例なんだからそんな言葉遊びで定義づけたって許されるわけないもん。逆にこれで「あ、植物じゃないんですね。じゃあ採っていいです」とか言われたらそれはそれでどうかと思うもん。

 しかしこれで完全に八方ふさがりになってしまいました。八方っていうほど手を打ったわけでもないんですけど。こうなってしまっては別の場所を探すしかないか。と半ば諦めはじめていたころ、研究会メンバーの一人であるSさんが朗報を持ってきてくれました。曰く、ある条件を満たせば採取の許可が下りるとのこと。

 このSさんという方はもともと県の職員として今回のような許可申請に携わる仕事をされていたというその道のプロです。今は定年を迎えて退職されていますが、長年培った経験とコネクションは健在で研究会内での観察会で許可を取るときはいつも中心になって動いてもらっています。この県南観察会は私の発案ということもあり、全ての手続きを一任されていたのですが、見るに見かねて助け船を出していただけたようです。

 教えられたのは植物採取禁止の条例とは別の部分。小難しい文章で書かれていましたが要約するとそこには「公園内でイベントを行う人は市長から許可を得ること」「市長から許可を得てイベントを行う場合は○○条(植物採取禁止の条例)は免除される」ということが書かれていました。当該の条例ばかり睨んでいた私には全く想定外の内容でした。そんなところに抜け穴があったのか!

 ただこの抜け穴に関しても確実というものではないらしく、条例で想定されているイベントというのは募金だとか集会だとかフリーマーケットだとかの類で、採取を含む菌類調査は一番近くて競技会? いやこの場合は撮影会になるのか? という具合。それでも市長から許可を得ることができれば何とかなる、ということが分かっただけでも前進です。割とガチでふるさと納税について調べ始めていた手を止めて、申請書の作成に取り掛かりました。

 ところがこれがまた一苦労でした。一通りの書き方はSさんに教えてもらったものの、細かい部分をどうしたらいいのか判断が付きません。自治体によって申請書の様式も違うし、いちいちSさんに聞いていくのもご迷惑だし、不備があって弾かれでもしたら目も当てられません。こうなったら自治体の担当職員に直接聞いてやれ、と意を決しました。

 ついにやってきた自治体職員との直接対決です。今までメールでのやり取りはしてきましたがもうそんなまどろっこしいことは言ってられません。観察会の予定日は段々と迫ってきているのです。頭の中で何度も会話をシミュレーションし、調べておいた電話番号をコールしました。

 担当不在。

 なんか現場に行ってるそうです。まあ公園関係の担当部署ならそういうこともあるでしょうね。私の方も仕事中の休憩時間にかけているので向こうから折り返しというわけにはいきません。お昼休みにもう一回かけなおすことにしました。

 昼食に出かけている。

 この野郎。いやそりゃ役所の人も人間なんですからご飯は食べに行くでしょうよ。そこに不満を持つ気は全くありません。でも昼休みにかけなおしますって伝えたはずなんですけどね……。私自身、平日はずっと仕事で土日祝日しか休みがありません。最近は自治体の中でも夜まで開いていたり、休日に受け付けてたりすることがあるそうですが、そういうのは税務関係とかの主要部署が中心です。結局明日の昼の何分ごろにかけますと伝えてその日は終わりました。


 そうしていよいよ担当職員と直に(電話越しですけど)対話する日がやってきました。心象を悪くして審査に影響したらまずいのでここは理知的かつ紳士的に自己紹介から始め、申請の目的や意義を説明していきました。

私「――つきましては、この公園での調査も後々のレッドデータへ繋げていきたいと……」
職員さん「何? 何のデータ?」
私「レッドデータです。レッドデータリスト。絶滅危惧種などに関してまとめたもので」
職員さん「ああ、そういうやつがあるの」
私「(知らんのかい)ええ、まだ我々も事前調査の段階ですが後々は動植物のように県と情報を共有して……」
職員さん「なんかこうして聞いたら公的なもんみたいだね。いやあ個人的なやつかと思ってた。そういうことなら採取してもいいですよ」

 こともなげに言われた言葉に一瞬我が耳を疑いました。許可が下りたことではなくて、その前の部分。いや、会の実績なり方針なり、観察会の目的なり意義なり、全部メールに書いてましたよね?

 読んでないんかい、という言葉を飲み込んで、私は極めて朗らかに謝辞を述べました。大人ですね。大人になるって悲しいことなの。こうして長きにわたる自治体との戦いは思いの外あっさりと幕を閉じたのでした。

 後日、事の顛末をお世話になったSさんにお礼がてら報告したところ、
「いやー許可貰えてよかったねぇ。これでだめなら県の方から圧力かけてぶんどってやろうかと思ってたんだよ」


 そうしてもらえばよかったです。



 なおそれとは別のもう一つ、虫草観察会の方はというと所属している自治体へ確認したところ、

「ああ、キノコならいいですよ。事前申請とかもいらないんで」

 とのことであっさり許可をいただけました。これが植物とかならまた話は違ってきたのでしょう。許可がすんなり貰えたことは嬉しくもあり、同時にやや複雑な気持ちでもありました。

 キノコってまだまだ保護対象として見られてないんだなぁ……。

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コメント

No title

最近涼しくなって、雨もいい感じに降ってますが、キノコの発生状況はいかがですか。

今日、県道脇の落ち葉の吹き溜まりみたいな所に、えらくでっかいイグチが群生してました。
「で、これ食えるの?食えそうじゃね?」
という己の心の声を振り切って撤退しましたが、ああいう場所って採取許可要らないよ…ね?

Re: No title

>いぼがえるさん
今年は夏がひどかったものの秋はなかなか良さそうな雰囲気です。
地元では雨の降りもしとしとといい具合ですのでこの調子が続けば期待できそうです。

基本的にどんな土地でも所有者がいて(国や自治体を含む)確認を取るのが筋なのでしょうが、
実際のところあからさまな私有地や公園以外ではそう咎められることはないでしょう。
採ったものが食べられるかどうかはまた別の話になりますけど。

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